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髪の毛を抜く癖(抜毛症)

チリチリ・ボコボコの髪の毛を抜くのをやめられない
抜毛症とは

髪の毛抜毛症は無意識または強迫的に毛髪を引き抜く症状が現れる、毛を抜くことがやめられない疾患です。医学的には、「トリコチロマニア」と呼ばれ、強迫性障害の一つとして認識されています。
抜く対象は主に頭髪や眉毛であり、時には体毛や陰毛を抜くこともあります。さらに、チリチリ・ザラザラした、特定の手触りの毛だけを抜くこともあり、歯を使うこともあります。また、抜毛行為だけでなく、脱毛を気にして頭皮を擦る、皮膚を掻きむしることで生じた脱毛も、抜毛症に含まれます。
抜毛症の原因ははっきりと解明されていませんが、過度なストレスや不安、うつ状態など心理的要因が誘因と考えられており、症状の改善には適切な治療が必要です。気になる症状がある方は当クリニックまでご相談ください。

抜毛症の原因

抜毛症の原因ははっきりとは分かっていませんが、以下が関連しているといわれています。

不安やストレス

毛を引き抜く行為を通して一時的な快感が得られ、不安やストレスをコントロールする無意識の行動として、毛髪を抜いてしまうと考えられています。
例えば、個人的な問題や人間関係のトラブル、学校や職場でのストレスなどが抜毛症を引き起こす要因となります。

うつ病や不安障害などの精神疾患

精神疾患にかかると、感情やストレスのコントロールが難しくなり、抜毛症の発症や悪化に繋がることがあります。
うつ病は気分の落ち込みや興味の喪失、エネルギー不足などの症状が現れる精神疾患です。うつ病では、自己評価が低下し、絶望感や無力感に襲われることがあります。このようなネガティブな感情が、抜毛症の引き金となる可能性があります。
不安障害は過度な不安や恐怖が長引く精神疾患です。不安や恐怖による緊張でストレスが溜まり、抜毛症の発症または悪化を引き起こすことがあります。

遺伝

抜毛症の発症には、遺伝も影響しているとされています。抜毛症そのものが遺伝するという訳ではありませんが、抜毛症の原因となるうつ病や不安障害は遺伝するといわれています。例えば、血縁者にうつ病や不安障害の方がいらっしゃる場合は、ご本人がこれらの精神障害により、抜毛症の発症リスクが上昇する可能性が指摘されています。

抜毛症の症状チェック

下記のチェックリストに該当する場合、抜毛症を疑いますが、診断の代替になるものではありませんので、気になる症状がある方はお早めに当クリニックへご相談ください。

  • 頭髪や体毛(眉毛や陰部を含む)を無意識に引き抜いてしまう
  • 抜毛をやめようと思っても続けてしまう
  • 髪や体毛を抜くと緊張や不安が和らぐ
  • 皮膚をむしったり、爪を噛んだりする癖が治らない
  • チリチリ、ザラザラした特定の質感の毛を抜く
  • 抜いた毛を飲み込んでしまう

抜毛症を発症しやすい年齢は?

抜毛症の患者様の約40%が10代です。子どもは自ら環境を変える選択肢が少ないため、ストレスのコントロールが上手くできないことがあります。そのため、解消しきれないストレスから抜毛症を発症することがあります。さらに、抜毛症の症状が進行すると、さらなるストレスや孤立感を抱えることがあります。
特に10代は感受性が豊かな時期なので、外見の変化による自己否定感や、周囲からの理解不足は心の負担になりやすいです。

抜毛症の方に多く見られる食毛症とは
(ラプンツェル症候群)

抜毛症では食毛症をお持ちの方もいます。食毛症は、抜いた髪の毛を飲み込んでしまう癖です。しかし、人間の体内では、髪の毛は消化されません。そのまま飲み込み続けると、胃や腸に髪の毛が溜まり、胃の中で髪の毛が固まり、手術を受けたケースも報告されています。前兆として、以下のような症状が現れることがあります。

  • 腹痛
  • 吐き気
  • 嘔吐
  • 腸閉塞
  • 胃潰瘍 など

抜毛症の治療

行動療法や心理療法が行われます。必要に応じて、薬物療法や併発している精神疾患の治療を優先することもあります。

習慣逆転法

抜毛行為のトリガーを特定し、代替え行動に切り替えていくトレーニングを行います。

心理療法

不安やストレスのきっかけを特定し、対処することで不安や気分の落ち込みを改善します。

薬物療法

抗うつ薬や抗不安薬などを使用し、抜毛行為を抑制します。

併存症の治療

不安障害やうつ病などを併発している場合はこれらの治療を行います。

抜毛症の状況や患者様の状態に応じて、上記の治療法を組み合わせて実施する場合もあります。医師の指示に従いながら、適切な治療を継続することが重要です。

抜毛症は完治する?

完治に必要な期間は患者様によって異なります。症状が軽度の場合は、自然治癒することもありますが、症状が長引くと治療が長期化しやすくなります。
加えて、他の精神疾患(うつ病や不安障害など)を併発している場合は、それらの治療が必要です。適切な治療を受けることで、抜毛症の症状が改善し、回復する可能性が高くなりますが、完全な治癒には時間をかけ継続的に治療を行うことが必要です。

抜毛症についてよくある質問

抜毛症が継続すると髪質は変化しますか?

抜毛により毛根や頭皮への負担が大きくなるため、抜毛症が長期間継続すると、髪質が変化する恐れがあります。髪が細くなる、切れ毛が増えるなどの可能性があります。

抜毛症が治癒した場合、髪が再生するまでどのくらいかかりますか?

髪の再生には個人差があるため断言できません。抜毛は毛根や頭皮への負担が大きくなるため、髪が生えるまで1年以上かかる場合や、全く生えない場合もあります。
また、健康な髪は抜けてから新たに生え変わるまで3~4ヶ月かかります。その後、1ケ月に1cm程度のペースで伸びていくとされます。

抜毛症は発達障害と関係していますか?

直接的な関連性は確認されていませんが、抜毛症と発達障害は同時に現れることがあります。例えば、発達障害のある方は社会に馴染みにくいことによるストレス・不安を抱えやすいため、抜毛症が発症しやすいとされています。

発達障害とは

抜毛症は早期に認識し、適切な治療を受けることが重要です。

抜毛症は自力で治療することが困難な精神疾患です。放っておくと薄毛や抜け毛が進行してしまう恐れがあります。
また、抜毛症の方々はうつ病や不安障害などの精神疾患を抱えていることも多いです。早急に対処することで、これらの症状の進行を防ぐことが可能です。
ご自身はもちろん、身近な方に抜毛症の兆候が見られた場合は、速やかに受診し、早期に適切な治療を受けるようにしましょう。